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近年、ROE(自己資本利益率)は日本でも徐々に浸透し、注目されています。2014年8月に経済産業省より発表された伊藤レポートで、日本企業の課題は欧米企業に比べ、資産回転率や財務レバレッジではなく、稼ぐ力にあると指摘しています。しかし、私は資産回転率の中でも売掛金回転と在庫回転は欧米に比べ、総じて低いことがCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)管理上の課題と考えます。在庫に関しては、従来の在庫回転率、在庫回転期間でなく、在庫回転日数を意思決定のための全社共通管理指標と位置付け、ROE、ROIC(投下資本利益率)の改善に向け、経営陣と現場の一体活動を提唱します。

在庫は重要な経営資源

在庫とは、ビジネスにとって利益の源泉であると同時に、損失をもたらすものであるといわれます。特に製造業、小売業、卸売業では、商品在庫が効率よく売上に転換されているかどうかを計る経営指標として在庫回転があり、一般的には以下の二つが使われています。

 

在庫回転率 

在庫回転率とは、一年間に在庫が何回転したかを示す指標です。

在庫回転率(回)= 売上高・売上原価(年間)÷ 在庫金額

在庫回転率は、主に経営者が対外発表等で使用されます。

在庫回転期間 

在庫回転期間とは、在庫を何日または何か月分持っているか、または、在庫をすべて消費(販売)するためにかかる期間を示す指標です。

在庫回転期間 = 在庫金額 ÷ 売上高・売上原価(月次または日次)

どちらも在庫が適正かどうかをみる指標と言われます。在庫の過去、現在の状況を語るにはそれで事足りますが、将来の意思決定のための指標としては不適切と思います。つまり財務会計用の指標であり、管理会計としての在庫回転ではないということです。

私は在庫起点経営コンサルタントとして在庫回転日数は経営層、オペレーションを担当する販売、製造、調達、物流関係者で共有すると同時に、調達、生産を決定する際の意思決定を補佐しうる指標であると確信しています。

本書では、在庫回転を現場で使われる単なる指標として捉えるのではなく、企業価値の創造に向け、管理会計として他の経営指標と関連付け、在庫回転を効果的に改善活動につなげるためには、どのような実務的な知識が必要か、またそれを支えるシステムとその活用、最後に実践版として現場で使える在庫管理について、著者の経験および具体的事例を交えて紹介します。

また本書では出版時点で把握可能な最新の四半期毎の決算数値(2018年12月末)を使って日米欧のCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)を解説している点も、従来の書籍とは大きく異なります。在庫管理の指南書として活用頂ければ幸いです。

 特典:読者の方には、30分間のオンラインでの無料相談に応じます。

目次

第一章 今、なぜ在庫回転が注目されているのか?

(1)在庫は企業の通信簿

(2)経営の効率性

(3)週次オペレーションサイクル

(4)在庫回転日数に関連する管理指標

第二章 管理会計と財務会計

第三章 CCCの位置付けと日米比較、国際比較

(1)主な財務指標

(2)CCCの位置付け

(3)CCCの日米比較

(4)スポーツ用品業界

(5)化学大手6社

(6)電子部品業界

(7)電子部品商社

(8)間接資材業界

(9)業界別国際比較

第四章 経営陣と現場で共有する週次パフォーマンス結果の重要性

(1)月末締め、翌月払い

(2)月次会計制度

(3)売掛債権

(4)日本電産の取り組み

(5)米HP社の取り組み

(6)在庫鮮度管理 各社の取り組み

(7)週次管理 各社の取り組み

(8)リーマンショック(2008年)から東日本大震災、タイ大洪水後(2012年)

第五章 経営手法・推進体制および求められるシステム要件とその活用

(1)キャッシュサイクルとリードタイム

(2)欠品率

(3)流通在庫(店頭在庫)

(4)在庫総枠管理と単品管理について

(5)売掛金管理の盲点

(6)効果的な経営手法

(7)効果的なシステムとその活用

第六章 実践 在庫の総枠管理と単品管理

(1)在庫診断クリニック

(2)P(調達・生産)、S(販売)、I(在庫)バランスについて

(3)プロダクト・カルテ

(4)簡易版資産管理・在庫の総枠管理と単品管理

(5)在庫管理:量と質の4象限マトリックス手法

 

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